消費者庁が機能していれば紅麹含有機能性表示食品による腎機能低下/障害の健康被害を防ぐことができたのでは?
(前回の記事よりの続き)
私は日頃より小林製薬さんの栄養補助食品(サプリメント)ビタミンB群を愛用しております。小林製薬さんの製品を選んだ第1の理由は、水溶性ビタミンである故に、分けて摂取したほうが効果的だからです。サプリメーカーの大半は、1日1粒の設定ですが、小林製薬さんの場合は、2粒設定なので分散できます。そして第2の理由は、パッケージに書かれている内容から、とても正直な企業さんだと感じたことです。
しかしながら今回のこの大惨事に際して、この米紅麹成分含有サプリの宣伝方法等をみるに、小林製薬さんは、たいへん失礼な言い方にはなってしまいますが、変質してしまったなあと感じてしまいました。宣伝文句の随所に、消費者に誤解を与える(端的に言えば「欺く」)表現が多々見受けられるのです。たとえば①「コメバイオ」というキャッチフレーズです。
米を育種したわけではありません。紅麹を育種したわけですから、「カビバイオ」とすべきです。単なる言葉の使い方に突っ込みを入れたわけではなく、これは後段で言及する、急激な速度で進行させる育種の危険性から目をそらせる効果があると思います。日頃から常食としているお米という言葉で、消費者の安心感を得られる効果があるでしょう。
こういった手法は、化粧品業界でもよくあることです。たとえば「植物性プロパンジオール」と表現される化粧品成分です。トウモロコシ等を発酵させて得られる成分として宣伝されていますが、実際には遺伝子組み換え大腸菌で変性させて得られる、プロピレングリコールの異性体です。このような理屈がまかり通ると、牛乳も植物性ということになります。この成分はプロピレングリコールと同様に、アレルギーの危険性が潜んでいます。
少々横道に逸れてしまいましたが、このキャッチフレーズは消費者に過剰な安心感を与えると言えます。ひとつ疑いが出てくると、いろいろな点でも同様のことがあるのではというのが、私の信念です。そこで私が調べたのは、消費者庁に提出されている添付資料です。その抄録部分には、下記のような内容が書かれています。
「米紅麹ポリケチドは一般食品に含まれ普段から食べられている成分であり、LDL コレステロール値の低下効果が報告されている成分でもある。」
今回の大惨事は、この一文から始まった可能性が高いのではと、私は考えております。
これではまるで我々日本人が、お味噌汁のように毎日紅麹を含有する食品を食しているような表現です。通常日本人は、紅麹を含有する食材を食しません。確かに沖縄には「豆腐よう」といった料理があるようですが、あくまでも珍味レベルの料理であり、塩分濃度が高くてごく少量を食する程度のものです。決して沖縄の方が常食するものではありません。沖縄では同様に珍味として「海ぶどう」なる緑藻が食されていますが、海ぶどうには毒があり、多量に食すると健康を害します。
味噌のように常食する食材の抽出物であれば安全という意味ではありません。たとえば味噌に含まれるアグリコン型のイソフラボンは、多量に食するととくに女性に健康被害を及ぼす可能性があります。念のために、お断りをしておきます。
機能性表示食品は、消費者庁への届け出だけで流通させることが可能です。消費者庁は、届出だから形式が整っていれば良いと、安易に思われていたのではないでしょうか。少なくとも提出された資料に目を通し、一般常識で間違いと判断できる表記(米紅麹ポリケチドは一般食品に含まれ普段から食べられている成分)があれば、指摘して差し戻す義務があったのではないのでしょうか。そうされていれば今回の大惨事は、起こらなかったではないでしょうか。
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